○集団救急事故時の救急救護計画

平成30年3月30日

消防本部訓令第4号

第1章 総則

(目的)

第1条 この計画は、燕・弥彦総合事務組合消防本部管内において発生した大規模救急救助事故等で、局地的かつ短時間に多数の傷病者が発生し、通常の出動体制では対応できない集団救急事故等(以下「集団救急事故」という。)を対象とし、救急救助隊等の効率的な運用と関係機関の密接な連携を保持し、総合力をもって救出救護を図ることを目的とする。

(運用基準)

第2条 この計画は、次のいずれかに該当する場合に運用する。

1 10人以上の傷病者の発生が予想される場合

2 救急隊4隊以上を集中的に運用する必要が予想される場合

3 その他、消防長が必要と認める場合

(活動の原則)

第3条 現場活動においては、別図1に掲げる集団救急事故基本活動図に基づき、二次災害の防止を図るとともに、警察、医療機関及びその他の関係機関と連絡を密接にし、傷病者の効率的な救護に当たる。また、救急活動については傷病者の適切な選別(以下「トリアージ」という。)を行い、重症者を最優先として必要な応急処置等を施した後、それぞれの傷病者に適応した医療機関へ迅速かつ安全に搬送することを原則とする。

第2章 出動区分及び応援要請

(出場区分)

第4条 消防長、次長、課長又は消防署長は、通報内容又は現場報告等により、集団救急事故と判断又は予想される場合は、別表第1に掲げる「集団救急事故出動計画」に基づき直ちに出場指令又は応援要請を行うものとする。

(消防団)

第5条 災害現場最高指揮者(以下「現場最高指揮者」という。)は、消防団の応援が必要な場合は、消防団長に出動を要請し、特命により出場するものとし、現場最高指揮者の指示により、消防隊等の任務に当たるものとする。

(他消防機関への応援要請)

第6条 消防長、次長、課長又は消防署長は、他消防機関の応援が必要と認めるときは、「消防(相互)応援協定」に基づき、応援要請を行うものとする。

(医師等への協力要請)

第7条 消防長、次長、課長又は消防署長は、必要に応じて次の任務を医師等に協力要請するものとする。

1 現場救護所における二次トリアージ

2 傷病者の搬送順位及び搬送先医療機関の選定

3 医学的観点からの助言

4 死亡者の確認

5 搬送時の医師による監視と処置が必要な場合の救急車への同乗

6 その他、必要と認める事項

(災害派遣医療チームの派遣要請)

第8条 消防長、次長、課長又は消防署長は、災害派遣医療チーム(以下「DMAT」という。)の派遣が必要と認めるときは、新潟県DMAT運営要綱に基づき、地域内代表消防本部に派遣の要請を行うものとする。

(その他の関係機関への応援要請)

第9条 消防長、次長、課長又は消防署長は、その他の関係機関の応援が必要と認めるときは、当該関係機関の長に応援要請を行うものとする。

第3章 現場活動

(最先着隊による初期活動)

第10条 集団救急事故等における最先着隊の任務は次のとおりとする。

1 集団救急事故の宣言

2 指揮命令及び連絡体制の確立

3 安全の確保(傷病者等、自己隊、活動環境の把握)

4 関係者の確保

5 情報収集

(1) 正確な発災場所

(2) 事故種別及び発生原因

(3) 二次災害発生危険の有無

(4) 傷病者数

6 警戒区域の設定及び後続隊等の進入、退出路の確保

7 通信室への状況報告及び応援要請(隊、資器材の増強)

8 状況に応じた現場救護所の設定及び一時救出場所の選定

(現場指揮本部の設置)

第11条 現場最高指揮者(以下「最高指揮者」という)又は指揮隊長は、燕・弥彦総合事務組合警防規程第24条に定めるもののほか次の各項に留意して現場指揮本部を設置する。

1 設置場所

(1) 現場全体が把握でき、かつ消防部隊の集結が容易な場所

(2) 現場救護所との連絡が容易な場所

(3) 二次災害発生危険のない場所

(4) 通信障害の少ない場所

2 編成と任務

現場指揮本部の編成と任務は、別表第2のとおりとし、担当は現場最高指揮者が指定することとする。

(傷病者集積場所の設置)

第12条 現場最高指揮者は、次の各項に留意して傷病者集積場所(一時救出場所)を設置を考慮する。

1 設置基準

(1) 発災現場から現場救護所までの距離が長い場合

(2) 発災現場の危険度が高い場合

(3) 迅速な担架搬送が困難な場合

2 設置場所

(1) 現場指揮本部との連絡が容易な場所

(2) 傷病者の収容及び一次トリアージが効果的に実施できる場所

3 傷病者集積場所(一時救出場所)の活動

(1) 一次トリアージによる緊急度分類の選別

(2) トリアージタッグの記入及び装着

(現場救護所の設置)

第13条 現場救護所は、次の各項に留意して設置するものとする。

1 設置基準

(1) トリアージシート又はロープ等により区域を明示し、重症度分類によって傷病者の搬送位置を指定しておくものとする。

(2) エアーテント等で設営し、必要に応じて簡易ベッド、毛布等を配置する。

(3) 既存の収容可能な施設等があれば活用を考慮する。

2 設置場所

(1) 現場指揮本部との連絡が容易な場所

(2) 二次災害発生危険のない場所

(3) 出場隊の進入、退出路が別系統で確保が可能な場所

(4) 活動障害のない平坦で広い場所で、二次トリアージが効果的に実施できる場所

(5) 通信障害が少ない場所

3 編成と任務

現場救護所の編成と任務は別表第3のとおりとし、救護所責任者は現場最高指揮者が指定し、他の担当は救護所責任者が指定することとする。

(活動隊の任務)

第14条 集団救急事故等における活動隊の任務は次のとおりとする。

1 最先着救急隊

(1) 傷病者集積場所又は現場救護所搬入エリアにて一次トリアージ区分表(別表第4)に基づき、トリアージを開始する。

(2) 原則として傷病者の搬送には当たらないものとする。

(3) 一次トリアージは、傷病者の応急処置に優先して実施すること。ただし、気道閉塞による用手気道確保、活動性出血への止血処置はこの限りではない。

2 救助隊

(1) 傷病者の救出、救護及び二次災害の防止を行う。

(2) 重篤、重症者の救出にあたっては、救急隊及び医療関係者と連絡を密にして実施する。

(3) 救出、救護及び二次災害の防止完了後は、消防隊及び救急隊の支援に当たる。

3 消防隊

(1) 危険区域及び警戒区域の設定を行う。

(2) 現場救護所の設営及び資器材の搬入を行う。

(3) 傷病者の担架搬送、介添及び避難誘導等を行う。

(4) 担架搬送等完了後は、救急隊の支援に当たる。

4 後続救急隊

(1) 現場救護所にて二次トリアージ区分表(別表第5)に基づき二次トリアージを実施する。

(2) 現場救護所にて救命処置及び応急処置を行う。なお現場に医師がいる場合は協力、助言を求め、その指示に従い処置を行う。

(3) 救護所責任者の指示により、傷病者を医療機関へ搬送する。

(トリアージ実施要領)

第15条 トリアージはトリアージタッグ(別図2)を使用し、原則として観察判定者(救急救命士)及び記録者2名1組で実施するものとする。

2 トリアージにおける留意事項は次の各号に定めるものとする。

(1) トリアージタッグの装着優先部位は、右手、左手、右足、左足、首の順とする。

(2) トリアージタッグの流れは、別図3のとおりとする。

3 心肺機能停止傷病者への対応については、次の各号に定めるものとする。

(1) 明らかな死亡(接触時、頸部離断、広範な脳脱出、体幹部離断、腐敗等)と判断できる傷病者はトリアージ区分を「黒」とするが、この場合においても、傷病者接触時の様子、状態等を必ずトリアージタッグに記載すること。

(2) 明らかな死亡と判断できない傷病者(CPA状態)はトリアージ区分を「黒」とするが、他の重症傷病者に必要な人的、物的資源が確保されている場合においては、特定行為を含む心肺蘇生処置を行うものとする。

(収容医療機関の確保)

第16条 通信室は、集団救急事故を覚知したときは、必要となる管内二次医療機関等に対し速やかに事故発生を通報するものとする。

2 現場指揮本部は、傷病者数及びトリアージ区分を速やかに把握し、通信室へ情報提供するものとする。

3 通信室は、現場指揮本部からの報告により、医療機関にトリアージ区分別の収容可能人数を確認し、その情報を現場指揮本部に連絡するものとする。

4 通信室は、傷病者搬送が全て完了した場合は、受入れ要請した全ての医療機関に対し、必ず傷病者搬送終了の連絡を行うものとする。

(傷病者の搬送)

第17条 搬送先医療機関の選定は原則として救護所責任者又は観察判定者(救急救命士)が行い、トリアージ区分をもとに搬送するものとする。

2 1台の救急車における収容人員は、概ね次のとおりとする。

(1) トリアージ区分「赤」の傷病者 1名

(2) トリアージ区分「黄」の傷病者 1~2名

(3) トリアージ区分「緑」の傷病者 乗車定員内

(4) トリアージ区分「緑」の傷病者は、救急車以外の緊急車両により搬送することができる。

3 道路交通法施行令(昭和35年政令270号)第13条に定める緊急自動車以外の車両を使用する場合は、警察車両の誘導により搬送すること。

(情報収集等と広報)

第18条 活動隊からの報告及び集団救急事故情報等の記録は、現場指揮本部が統括し、次により行う。

1 集団救急事故の傷病者に関する事項は、傷病者一覧(様式1)により記録するものとする。

2 住民等に対する広報は、災害等における二次災害防止及び活動による危害防止を重点に広報車及び拡声器等を使用して行うこととし、報道関係者等に対する広報は、広報担当者が専従して行うものとする。

第4章 雑則

(訓練)

第19条 集団救急事故時の対応を円滑に運用するため、適宜訓練を行うものとする。

この計画は、平成30年4月1日から実施する。

(令和3年消本訓令第1号)

この計画は、令和3年2月17日から実施する。

別表第1

集団救急事故出動計画

署所別管轄区域

第1出動

第2出動

第3出動

地区名

吉田

分水

弥彦

三王

吉田

分水

弥彦

三王

各署所

吉田

市街地

指揮

救急

救助

救急

ポンプ

救急

救急


救急





全隊

粟生津方面

指揮

救急

救助

救急

救急

ポンプ

救急


救急





全隊

米納津方面

指揮

救急

救助


ポンプ

救急

救急

救急

救急





全隊

矢作方面

指揮

救急

救助

救急

ポンプ

救急

救急


救急





全隊

分水

市街地

指揮

救急

救助

救急

ポンプ


救急

救急


救急





全隊

横田方面

指揮

救急

救急

救急

ポンプ


救急

救助





救急


全隊

国上方面

指揮

救急

救助

救急

ポンプ

救急

救急


救急





全隊

牧ヶ花方面

指揮

救急

救助

救急

ポンプ

救急

救急


救急





全隊

弥彦

市街地

指揮

救急

救助

救急

救急

救急

ポンプ


救急





全隊

麓方面

指揮

救急

救助

救急

救急

救急

ポンプ


救急





全隊

井田方面

指揮

救急

救助

救急

救急

救急

ポンプ


救急





全隊

長辰方面

指揮

救急

救助

救急

救急

救急

ポンプ


救急





全隊

市街地

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

小池方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

桜町方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

小高方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

三王渕

長所方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

小中川方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

灰方方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

中川方面

指揮

救急

ポンプ

救急


救急

救助

救急




救急


全隊

別表第2

任務等担当

人員(人)

任務

現場最高指揮者

1

1 現場指揮本部の統括指揮

2 出動部隊の統括指揮

3 現場活動方針の検討

4 応援要請(他消防本部、消防団、警察、DMAT等)

指揮本部員

(通信担当)

必要数

1 通信の運用に関すること

2 関係機関(市町村、医療機関、警察棟)との連絡調整

指揮本部員

(情報・広報担当)

必要数

1 現場活動隊からの情報収集

2 災害状況の調査

3 住民又は報道機関に対する広報

指揮本部

(記録担当)

必要数

1 医療機関の収容状況等の調査

2 傷病者一覧表の作成(様式1)

別表第3

任務等担当

人員(人)

任務

救護所責任者

1

1 現場救護所全体の統括指揮

2 現場指揮本部との連絡

3 資器材の調達調整

4 緊急度分類表に基づく搬送順位の決定

トリアージ班

必要数

1 現場救護所への搬入受付及び記録

2 傷病者のトリアージ

3 トリアージタグの追記

4 カテゴリーに応じた収容場所の指示

応急処置班

必要数

1 緊急度分類表に応じた応急処置

救急車運用班

必要数

1 救急車への収容人員の調整

2 搬送先医療機関の調整

別表第4

一次トリアージ区分表

画像

(※1)第10条第3項のトリアージ実施要領を参照

(※2)脈の触知に加え、以下に挙げる循環不全の徴候のいずれかを伴う場合においては、「赤」と判定することを妨げない。

1 皮膚の蒼白、冷汗あり

2 抹消動脈は触れるが微弱である

3 頻脈(120回/分超)

別表第5

二次トリアージ区分表

第1段階

生理学的評価

意識:JCS2桁以上、GCS8以下

呼吸:10回/分未満、30回/分以上

脈拍:50回/分未満、120回/分以上

血圧:収縮期血圧90mmHg未満、200mmHg以上

SpO2:90%未満

体温:35℃以下

その他:ショック症状

第2段階

解剖学的評価

開放性頭蓋骨骨折

頭蓋底骨折

顔面、気道熱傷

緊張性気胸、開放性気胸、気管・気道損傷

心タンポナーデ

気胸、血気胸、フレイルチェスト

腹腔内出血、腹部臓器損傷

骨盤骨折、両側大腿骨骨折

頸髄損傷(四肢麻痺)

デグロービング損傷

クラッシュ症候群

重要臓器・大血管損傷に至る穿通外傷

専門医の治療を要する切断肢

専門医の治療を要する重症熱傷

第3段階

受傷機転

体幹部の挟圧

1肢以上の挟圧(4時間以上)

爆発

高所墜落

異常温度環境

有毒ガス発生

NBC(放射性物質、生物剤、化学剤による災害)

赤または黄

第4段階

災害時要援護者

小児

高齢者

妊婦

基礎疾患患者

(心疾患・呼吸器疾患・糖尿病・肝硬変・透析患者・出血性疾患)

外国人旅行者(言葉の通じない)

※必要に応じて余裕があれば「黄」とする。

別図1(第3条関係)

集団救急事故基本活動図

画像

別図2

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別図3

トリアージタッグの流れ

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集団救急事故時の救急救護計画

平成30年3月30日 消防本部訓令第4号

(令和3年2月17日施行)